

本校の音楽室には、世界最高峰のピアノメーカーと称されるSTEINWAY & SONS 社製のグランドピアノ(以下、スタインウェイ)があります。同型のスタインウェイの新品価格は約2000万円(2025年2月現在)という、大変高級なピアノです。その高級さゆえ、スタインウェイを保有している公立高校は全国的にも数えるほどしかありません。この大変貴重な本校のスタインウェイにまつわる物語をご紹介します。
本校のスタインウェイは、昭和2年(1927年)、本校の前身である田川高等女学校の初代校長の熱意により購入されました。当時日本に3台しかないと言われていたスタインウェイを「子女教育上欠くべからざるもの(欠かせないもの)」と保護者を説得したといいます。本校にやってきたこのドイツ・ハンブルク製のスタインウェイは、その“黄金期”にあたる大正12年(1923年)製の高品質かつ貴重なもので、その後長きにわたり本校生徒たちの感性をはぐくみ、音楽教育の向上に役立てられてきました。

購入から8年後の様子(『百年史』より)
ところが、購入から45年が過ぎた昭和47年(1972年)、スタインウェイが老朽化してしまったため、同窓会から新たにヤマハのセミコンサートピアノが寄贈されました。するとその後、役目を失ったスタインウェイは、いつしかその存在を忘れさられてしまったのです。
昭和から平成に代わり、当時を知る多くの卒業生から「スタインウェイのピアノは?」と問い合わせがありましたが、どれだけ探しても見つかりません。ようやく平成10年(1998年)になって、旧職員から得た手がかりをもとに当時の校長によって探し出されたときには、脚の部分が取り外されてほこりにまみれ、見るも痛ましい姿で楽器室の奥に眠っていました。

楽器室に眠っていたスタインウェイ(同上)
27年もの間、人目にふれることなく、その置き場所すら忘れられていたスタインウェイ。この貴重なピアノを復活させたいという多くの方々の熱い思いによって、大規模な修復(オーバーホール)に向けたプロジェクトが動き出します。そして、同窓会・地域の方々・保護者・教職員から多額のご寄付をいただき、再び命が吹き込まれたスタインウェイは、翌平成11年(1999年)の「スタインウェイ修復記念演奏会」で、華々しく復活をとげることができたのです。新聞各紙でも「ピアノの名器27年ぶりの調べ」「西田川OBら寄付で修復」(読売新聞)などと大きく取り上げられました。田川文化センターを埋め尽くした約1100名の観客はそのきらびやかな音色に酔いしれ、会場は感動につつまれました。

スタインウェイ修復記念演奏会の様子(同上)
今年、令和8年(2026年)は修復から27年、来年は本校にスタインウェイがやって来て100年という節目の年です。いまも音楽の授業や部活動で大切に使われており、製造から103年経ってなお、華やかで美しい音色を奏で続けています。


※本校『百年史』・『九十年史』をもとに、再構成しました。





